このオペラは元々は五幕版でフランス語の台本がオリジナルだったようです。そしてそれから何度も改訂が加えられており、最近ではイタリア語で上演される事が多くなってきて、イタリア語の四幕版と五幕版での上演が多くなってきているようです。中でもバレエを含んだヴァージョンもあるみたいです。
ちなみに四幕版では、五幕版の第二幕から始まっており、五幕版の第一幕がカットされているって感じです。
台本・・・フランソワ・ヨーゼフ・メリ、カミ-ュ・デュ・ロークル
作曲年・・・1865年~1866年
初演・・・1867年3月 パリオペラ座
登場人物
ドン・カルロ(テノール)
エリザベッタ(ソプラノ)
フィリッポ2世(バス)
ロドリーゴ(バリトン)
エボリ公女(メゾ・ソプラノ)
宗教裁判長(バス)
修道士(バス)
テバルド(ソプラノ)
天の声(ソプラノ)
レルマ伯爵(テノール)
あらすじ
第一幕
16世紀頃、パリの郊外にあるフォンテンブローの森で狩人達が獲物をめがけて追い掛け回しています。父であるスペイン国王フィリッポ2世の猛反対を押し切って、そこへ紛れ込んでスペインの王子ドン・カルロがやって来ます。
カルロは自分の許婚であるフランス国王アンリ2世の王女エリザベッタを一目見ようと思い、こっそりとこの森へやって来たのです。
すると、そこへエリザベッタの一行が道に迷って来ます。エリザベッタのお付の小姓テバルドがその場から離れてカルロとエリザベッタが2人きりになった時に、自分はスペインの使者であるかの様に偽り、エリザベッタに自分の持っていた肖像画のペンダントを渡します。その肖像画を見たエリザベッタはそこにいる人間が王子である事が分かって大喜び!当然の事ながら2人は愛を語り合います。
しかし喜んでいられるのはそこまで・・・。
小姓テバルドが戻って来て、エリザベッタに彼女が結婚する事になった相手は、王子ではなくその父親であるスペイン国王フィリッポ2世である事を告げます。テバルドのこの言葉を聞いたカルロとエリザベッタは大ショックを受けます。恋人として結ばれた筈の2人はお互いの苦しい感情を歌い上げます。そんな中に王の使者がやって来て、エリザベッタにフィリッポ2世と結婚するように促し、周りにいる者達全てがその要求を受け入れる事を求めます。そして遂にエリザベッタは嫌々ながらもフィリッポ2世との結婚に承諾してしまうのです。
そこにいる人々が皆フィリッポ2世とエリザベッタの婚約の成立を喜び称える中で、カルロは絶望感に打ちひしがれます。
第二幕
スペインのサン・ジュスト僧院の先代国王カルロ5世の墓の前で修道士達が祈りを捧げています。
そこへ打ちひしがれたカルロ登場。落ち込むカルロに修道士が話し掛けるのですが、何とその声がこの僧院の墓地に眠る祖父カルロ5世の声と余りにも似ているので、カルロは怯え始めます。
そんな時にカルロの頼れる友人ロドリーゴ登場!恋の事で悩みぬいている王子を励まし、エリザベッタとの事は諦める様に促すと同時に圧制に苦しんでいるフランドルの救済に立ち上がる様に勧めます。そして2人の友人同士は共にフランドルを救済する事を誓い合うのです。
一方、サンジュスト僧院の庭ではエボリ公女や女官達が楽しそうにヴェールの歌を歌っています。そこへ悲しみにくれた表情の王妃エリザベッタがやって来ます。その時にロドリーゴが入ってきて、エリザベッタにカルロからの手紙をこっそり手渡し、恋に悩むカルロの事を語ると、それを見たエボリ公女はカルロは自分の事を思い続けて悩んでいると勝手に勘違いして思い込んでしまいます。
エリザベッタは王子に会うことを了解し、その場にいた全ての者は立ち去り、そこへカルロが入ってきます。
カルロは最初は自分をフランドルへ行ける様に計らってもらおうって感じの事を言い続けるのですが、彼の本心はその事よりエリザベッタへの愛情が捨てきれなく、必死になって求愛するような言葉を言い続けます。その言葉にエリザベッタは動揺をしますが我に帰った彼女は王子が自分を抱き締めようとした時に突っぱねます。絶望したカルロはその場から駆け去ります。
その様子を見たエリザベッタはその場に泣き崩れてしまうのですが、そこへフィリッポ2世が入ってきます。
フィリッポは王妃が1人でいることに不信を抱き、彼女に仕えていた女官を解雇してしまいます。ショックを受けた女官にエリザベッタは慰めの言葉をかけます。
エリザベッタ達が去った後でフィリッポとロドリーゴがその場で2人きりに。
フィリッポにロドリーゴはフランドルが悲惨な状況になっている事を必死になって説明します。フィリッポ2世はロドリーゴの考え方に疑問を抱きながらも信頼し、自分の息子と妻が不倫関係にあるのを感づいて、その調査をロドリーゴに命じます。
第三幕
王宮の庭園で自分に会いたいと言う手紙を受け取ったカルロはその手紙はエリザベッタからのものと思い込んで喜んでいます。しかし、その手紙は本当はエボリ公女からのもの物だったのです。
暗闇の中、エボリ公女がヴェールを被ってやって来ます。しかしカルロはその人がエリザベッタだと思い込んで口説き始めます。エボリ公女がヴェールを外した時に、人違いと分かったカルロは慌てますが、違う女性と勘違いされ、その相手が王妃であると分かったエボリ公女はもうブチ切れ状態!カルロとエリッザベッタの不倫を知ったエボリ公女はカルロを窮地に追い込んでやろうと彼を脅し始めます。そこへ頼れる友人ロドリーゴの登場!カルロを脅迫しまくるエボリ公女を殺そうとしますが結局は出来ません。キレたエボリ公女がその場から去った後、再びロドリーゴとカルロは友情を誓い合います。
異端者火刑の日、大勢の人々が国王フィリッポ2世を称えて寺院の前の広場に集まってきます。
これから火炙りの刑で焼き殺される囚人達を連行した列の後に王妃が登場。そして寺院の中から国王フィリッポ登場。
すると、そこへ王子ドン・カルロがフランドルの使者達を連れてやって来ます。フランドルの使者達は国王にフランドルの救済を求めますが、それどころか国王はフランドルは反乱の民だ!と彼らを追い払おうとします。そこでカルロは遂に剣を抜き父の国王に反乱を起こします。しかし状況を把握しているロドリーゴがカルロの剣を取り上げ、国王は王子の逮捕を命じます。そしてロドリーゴには公爵の位を与えます。それから、火炙りの刑が処され、火刑台の炎が高く上がり、天からの声が聞えます。
第四幕フィリッポ2世が自分の部屋で悩みに悩みぬいています。
彼は自分が妻であるエリザベッタから愛されず、息子であるカルロからも慕われていない事で悩みぬいています。カルロが自分に反抗して剣を突きつけた事がよほどショックだったのでしょう。そこへ王が招いた宗教裁判長が入ってきます。
国王は裁判長にカルロの自分に対する裏切り行為に関してどのようにするか相談をもち掛けます。しかし、国王に取ってみれば反抗はされたものの実の息子なのでその事でも悩んでいるって感じです。そんなフィリッポ2世に対して裁判長はカルロより、ロドリーゴの方を罰する事を求めます。裁判長にとっては、ロドリーゴこそが本当の反逆者と悟ったからです。
裁判長が退室した後、エリザベッタが宝石箱が盗まれたと駆け込んで来ます。しかし、彼女の宝石箱はエボリ公女がカルロとエリザベッタを陥れてやろうと、こっそりとフィリッポの部屋に持ち出していたのです。
宝石箱を開けたフィリッポは中にカルロの肖像画が入っているのを見つけて、もう完璧にブチ切れ状態!徹底的にエリザベッタをなじります。エリザベッタは運命に従って国王に嫁いだのにそれを疑うなんて・・・って感じなのですが、ブチ切れのフィリッポには通用しません。そしてフィリッポはエリザベッタを更に激しく罵り、彼女はショックで気を失います。そこへエボリ公女とロドリーゴが駆けつけ王妃を介抱し、国王とロドリーゴが退室した後、エボリ公女はエリザベッタに対して宝石箱の件を白状します。その時は王妃も許すのですが、この後でエボリ公女は更に自分が国王と不倫関係にあった事を白状します。その事でエリザベッタも遂に頭に来たって感じで、エボリ公女に国外追放か、修道院に入るかを迫ります。そこでエボリ公女は修道院に行く事を誓い、自分の美貌を激しく呪います。
一方、牢獄で囚われの身となっている王子ドン・カルロの元へロドリーゴがやって来ます。
ロドリーゴは自分がもう直に殺される事を覚悟しているのです。それは彼は王子を救う為に国王への反乱の張本人が自分である様に計らったのです。すると宗教裁判長の手下がこっそりやって来てロドリーゴを暗殺してしまいます。
ロドリーゴが死亡した後、フィリッポ2世がやって来て息子であるカルロに剣を返しに来ますがカルロはロドリーゴへの仕打ちに対して激怒して嘆きます。そんな時、民衆が王子の釈放を求めて牢獄になだれ込んで来て、そこへ宗教裁判長が出て来て騒ぎを静めます。その隙に民衆に紛れ込んで来たエボリ公女が王子を脱出させます。
第五幕サンジュスト僧院の先代カルロ5世の墓の前でエリザベッタが祈りを捧げています。
彼女は自分の運命を悲しみ、フォンテンブローの森で始めて出合ったカルロとの思い出を懐かしそうに語っています。そこへフランドルへ旅立とうとするカルロが登場。2人はこの世では結ばれる事が出来なかったけど天上で愛し合うことを誓い合います。2人が別れを惜しんでいる所へ完全にキレたフィリッポ2世と宗教裁判長が2人を捕らえるよう命じます。すると墓の中から再びカルロ5世の声が・・・!
カルロ5世の霊が出て来て、ドン・カルロを墓の中へ引きずり込んで終了です。
YUKIのコメント・コーナー
このオペラは何回も映像や録音を聴きましたが、これ、タイトルロールのドン・カルロって大きいアリアがないのですよねぇ。。。
だけど、他のキャラクターはエリザベッタもロドリーゴもエボリもフィリッポも大アリアがあるのです。なのにタイトルロールだけ主役であるにも関わらず最初に短いアリアが1曲だけってのがあっけない気がします。
だけど、このオペラはやはりドン・カルロはさすがにタイトルロールともあって重要だと思います。まぁ言えばアリアが目立っていないだけで、この役がしらけた感じになってしまったら、このオペラ全体がしらけてしまうと思います。だからそう言う意味では、私なりに推測していますが、かなり難しい役であると感じています。
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